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やる気を示さないで無力感を抱く子どもと、難しいことにも挑戦する習熟志向の子どもには、どのような違いがあるのでしょうか。 それは、失敗を経験した際に、その原因が努力不足にあると判断するかどうかにあると言われています。 「努力して勉強する」ということは、一生懸命に教科書を読んだり、参考書の問題を解いたりして、教科内容を理解しようとすることです。教科書を読む、参考書の問題を解くことは、その教材があれば誰にでもできることです。ただし、実際にその行動を起こすか否かは、自分自身にかかっています。つまり、努力は自分でコントロールできることなのです。失敗を能力や運、課題のせいにして、努力に帰属しないということは、困難を克服していこうという意志がないことを示しているでしょう。 無力感と習熟志向について、Diener & Dweck(1978)は実験を行っています。5年生を対象に、まず、日常の達成場面において、ある失敗の原因を自分の努力不足に帰属するのか否かを質問紙で尋ねました。そして、この回答をもとに、生徒を無力感群(失敗を努力不足に帰属しない)と習熟志向群(努力不足に帰属する)の2群に分けました。 質問紙を行った2週間後、2つの図形のうち一方を正しいと判断して選ぶという、弁別課題を行いました。図形は、色(赤・青)、形(四角・三角)、中心にある印(点・星)において、いずれかの特徴をもっています。例えば、赤・四角・点を示した図形と、青・三角・星の図形が対に呈示されます。そして、生徒は片方の図形を正しいと答え、それに対するフィードバック(正答・誤答)が実験者から与えられますが、この実験では、すべての回答に対して誤答であると告げられました。ここで、生徒は失敗を経験することになります。 この失敗の原因をどのように考えるかを調べた結果、無力感群の半数以上が、頭がよくないから問題を解くことができなかった(能力に帰属)と感じていることが明らかになりました。 これに対して、習熟志向群は能力に帰属する人はいませんでした。 また、無力感群は失敗を重ねるごとに、問題解決に効果的な方略をとらずに、自分の答えに固執するなど非効果的方略をとるようになりました。さらに、弱音を吐き、課題への興味を失い、失敗の原因を求めるようになりました。 一方、習熟志向群は課題に集中し、問題を解決しようと課題に取り組んでいました。 実験の前に行われたトレーニング試行では、両群ともに同じ程度、課題を習得しているにもかかわらず、その後の失敗に対する反応は、上記のように異なってしまうのです。どうして無力感を抱いてしまうのか、習熟志向をもつにはどのようにしたらいいのか。次回はこのことについて、考えていきたいと思います。 引用文献 Diener,C.I.,& Dweck,C.S. 1978 An analysis of learned helplessness: Continuous changes in performance, strategy, and achievement cognitions following failure. Journal of Personality and Social Psychology,36,451-462. (小方 涼子) <gu-gu カレッジ専属講師> 教育心理学・社会心理学/小方 涼子 環境心理学/松本 聡子 |
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